フォントがわかるとアニメがわかる!?

 

『ふぉんとのはなし』連動コラム、今回のテーマは「アニメの文字」です。次回予告や公式サイト、TVスポットやBlu-ray・DVDのブックレットなど、アニメの周りはたくさんの文字であふれています。アニメに使われているフォントを知れば、そのアニメのことがもっとよくわかるはず。そこでこのコラムではひとつのアニメ作品を取り上げて、どんなフォントがどのように使われているのかを分析します。

 

春アニメで一番熱かった『甲鉄城のカバネリ』

『甲鉄城のカバネリ』をご存じですか?2016年4月からフジテレビのノイタミナ枠で放送された人気オリジナルアニメです。

人を喰らってその数を爆発的に増やす化け物「カバネ」であふれる島国・日ノ本の人々は、「駅」という砦を築いてそこに閉じこもることでその脅威に対抗していました。主人公・生駒の住む顕金駅は、あることがきっかけとなって「カバネ」であふれかえってしまいます。生駒は自らが開発した「カバネ」を倒せる武器・ツラヌキ筒を手に「カバネ」と戦います。

制作は『ギルティクラウン』『進撃の巨人』の監督・荒木哲郎氏が率いるWIT STUDIOで、キャラクター原案の美樹本晴彦氏の美麗なイラストがそのまま動いているようなアニメーションはアニメ界の話題をさらっています。

ハイレベルなアニメーションと、ゾンビパニックのエンタメ性、絶望的な状況の中から立ち上がろうとする現代の王道ストーリーの融合が、『カバネリ』の人気の秘訣だったといえるでしょう。

 

『カバネリ』に「セリフ体」?
まずは『カバネリ』のタイトルの文字を見てみましょう。

 

公式サイトはこちら【http://kabaneri.com/】

力強く大胆な筆文字に「の」の歯車が特徴的ですね。実は、私がはじめてこのタイトルを見たとき、「昔っぽいアニメ」という印象を抱きました。「甲鉄城のカバネリ」の部分は筆文字が使われていているためです。

しかし、大事なのはその下です!ローマ字で「KABANERI OF IRON FORTRESS」と小さく書いてあります。残念ながら詳しいフォント名まではわかりませんでしたが、これはセリフ体のフォントです。「セリフ」というのは文字の端っこについているちょんとした角のような部分のことを言います。セリフ体のフォントでもっとも有名なのは「Trajan」というフォントです。これは約2000年前ローマに建てられた「トラヤヌス帝の碑文」の文字をもとにデザインされました。映画『タイタニック』や『ラストサムライ』のタイトルデザインにも使用されています。

図1

 

試しにTrajanでタイトルを組んでみたのですが、いかがでしょうか?Nのセリフなど本家とは少し異なりますが優雅な雰囲気がありますね。あのタイトルに使われているフォントがぜひ知りたいものです。

 

和文フォントには「筑紫明朝」

英字フォントは優雅な美しさを持つセリフ体のフォントが使われていました。『カバネリ』には、英字だけではなく和文も使われています。そこで次は、和文フォントは何が使われているのかを見ていきましょう。

注目してほしいのは、公式サイトの「貫け、鋼の心を」というコピーに使われているひらがなです。線は細くても流麗かつ大胆な筆致のこのフォントは「筑紫Bオールド明朝」に違いありません。このフォントのひらがなは流れるような筆運びで書かれた文字のように美しく、かつ不安定で独特な雰囲気があります。

また、次回予告動画に使われているフォントは「筑紫Bオールド明朝」の親戚の「筑紫Aオールド明朝」です。「筑紫Bオールド明朝」よりも癖がなく可読性に優れますが、その筆運びの美しさには「筑紫Bオールド明朝」に通じるところがあり『カバネリ』のイメージに統一感を与えています。Blu-rayのブックレットにも筑紫明朝が使われていました。

図2

 

『進撃の巨人』の「ふぉんとのはなし」

7月28日のイベント「ふぉんとのはなし」には、グラフィックデザイナーの下山隆氏が登壇してくださいます。下山氏は、『カバネリ』の荒木氏が監督したアニメ『進撃の巨人』のタイトルデザインをされています。イベントでは、下山さんがどのようにフォントを選びデザインをなさっているのか、その裏側に迫ります。

また、そのフォントがどうやって作られたのか、フォントメーカーの株式会社モリサワさんがより深く掘り下げてくださいます。

アニメ・漫画が好きな人、必見です!みなさまのご来場を心よりお待ちしています。

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