マツリバナシ。

早稲田祭をもっと楽しくするウェブコラム

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マツリ×食

食はエンターテインメントだ!

鹿野淳

私たちは毎日食事をする。それは人間の体にとって栄養を摂取することは必要であるからだ。しかし、それだけのために人は食事をするわけではない。美味しいものを食べる。誰かと一緒に食事をする。それは、毎日を彩る大事な要素になりうる。

祭においてもそれも然り。一日を楽しむために、何を食べるか。それは、祭を十二分に楽しむために大切なことなのである。

食べることについてこだわりを持つのが、早稲田リンクスの早稲田祭企画「目に視える音」に出演していただく鹿野淳氏である。彼は音楽シーンを熱く見据えている音楽ジャーナリストとして、早稲田祭にも過去五回出演している。それと同時に、食に対して深いこだわりを持つ美食家としての一面も持ち合わせているのだ。そんな鹿野氏に食と音楽にまつわるエピソード、早稲田でのオススメのご飯、そして祭と食の関係について語っていただいた。

 


 

——鹿野さんが食に対してこだわりを持つようになったきっかけはありますか。

 

そもそも、僕はとてもたくさんご飯を食べるんですよ。回転寿司とかも若い頃は60から70皿食べられたんです。今でも40皿は食べますね。そのきっかけになったのは、高校生のころです。当時僕の家は貧しくて、朝から夜までほとんど一人で過ごすことが多かった。だから親から、一日に三食分とお小遣いを合わせて1000円もらっていたんですよ。それは、苦労して両親が出してくれているお金だったと思うんですけど、それだけで三食を食べなければいけなかったのは大変で。それにロックが好きだったから欲しいレコードもたくさんあったんですけど、そこにはお金を出せなかったんです。

そんなあるとき、トーキング・ヘッズっていうバンドが『リメイン・イン・ライト』という作品を出すということを知ったんです。このアルバムはロックバンドが本格的にアフリカンミュージックを導入した初の作品として知られていて、僕も当時その前評判を聞いて、それだけはどうしても欲しかったんです。

どうにかお金を捻出しようって思っていたときに、ちょうど近所にショッピングモールみたいな施設ができて。その中にあるお店で「20分間で四人前の焼きそばを食べたら無料!」というのをウリしてた店があったんです。それを見たときに「四人前を食べられるということは、この焼きそばを食べ切れば、他に一日何も食わなくていいんだ!」って閃いて。タダで一日分のご飯を食べられる上に、親からもらった1000円がそのままお小遣いになるということに惹かれて挑戦したら、辛かったけど食べられた。今まで食が細いほうだったんですが、レコード欲しいがために、そこからたくさんご飯を食べられるようになったんです。そうやってお金を貯めて買った、トーキング・ヘッズのアルバムは格別でしたね。

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――そこからご飯をたくさん食べるようになったと。

 

はい。タダ食いだけじゃなく、賞金が出るフードファイトにも挑戦してました。飯田橋に当時、餃子百個かラーメン十杯どちらかを食べきったら1万円くれる店があったんです。だから鎌倉から飯田橋に行って、昼に餃子を食べて1万円もらって、そこから散歩してお腹をすかして、夜ラーメンを食べて全部で2万円を稼いだり。だからバイトをしなくても最大、月に18万円を稼ぎました。今ではただ美味しいものを食べるだけの人間になったので、逆にご飯に対してあの頃の何十倍ものお金をかけてますけど。

 

――以前鹿野さんは早稲田のエクステンションセンターで授業をされていて、早稲田でご飯を食べることも多かったと思います。そのときは何を召し上がられているのでしょうか。

 

僕が早稲田に来るときのご飯の食べかたはいつも決まっています。まず「メルシー」でラーメンを食べる。その次に歩いて「やまぐち」に行きます。あそこの鶏チャーシューは本当に美味しくて好きですね。そして最後はいつも違うんですが、「蔭山」の鶏白湯か「RED ROCK」のローストビーフ丼で締めます。早稲田辺りのご飯って「武道家」みたいな脂っこい麺類が主流だと思うんですが、食べると口の中が塩分でいっぱいになって、量よりも味覚でお腹いっぱいになっちゃうんですよね。僕は基本的にお店をはしごしたい人間なので、程よい塩味が好きなもので、早稲田系の店では野菜マシマシ脂多めだけでなく、塩分サゲサゲみたいな追加注文もできると助かるんですが。

 

――三軒も行くのはなかなか難しいとは思います。大抵の人はそのうちのどれかだけで満腹になってしまいそうなのですが。

 

それはね、違うんですよ、きっと。みんな脳内イメージが足りないんだと思います。朝起きてから、「今日はお昼に『メルシー』で食べたあと、次は『やまぐち』、最後は『蔭山』に行こう!」とイメージを何度もするんです。そうすると、その流れ自体が単なる一つのお昼ご飯になるんです。本当の話ですよ。ある種、今日一日のエンターテインメントはこれだ!と自分で思って、食べることを楽しみにすることが大事だと思いますね。

 

――別々に考えてしまうから、食べれなくなるんですね。

 

そうです。だって人は、脳が全て満腹中枢とかをコントロールしてるわけじゃないですか。食べれないって思うのは、脳で食べられないと思っているからなんです。逆に「別腹」という言葉がありますが、それは脳が「これだったら食べれるな」って思うから別腹になるんです。たい焼きやかき氷だったら食べられちゃうみたいな。それと同じですよ。

 

――「メルシー」に行っても、「やまぐち」は別腹と思えばいいと。

 

思えばいいというか、店替われば別腹ですよ。「今日は三つのお店でお昼を食べたい!」と思うと絶対食べられますよ。牛丼と紅生姜とお茶で3つでしょ? それと3店舗で1つずつ食べるのって、細胞レベルでは一緒のはずですって。真面目な話、頭でそう思っておくと体がそのメカニズムに必ず反応しますから。「これは食べられない」という線を引いているのは自分自身なんです。まあ、いくら食べられたとしてもなんの自慢にもなりませんけどね。

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――早稲田祭のときは学内にも模擬店が出て、外のお店もたくさんの来場者がいます。鹿野さんが考える、早稲田祭で食事を楽しむための方法はありますか。

 

高田馬場や早稲田は食べ物屋さんがたくさんあってすごいなと思うんですよ。同じ学生街でも、僕の母校がある御茶ノ水より学生メシが充実している。だから、初めて早稲田に来る人は、早稲田祭は校内で楽しむんだけど、食べ物は外で食べたほうがいいと思います。出演者にとっても高田馬場や早稲田のご飯は魅力的にみえるんですよね。

だから早稲田祭自体も、もっとその地の利を生かしたほうが思います。例えば芸人のやついいちろうが渋谷で「やついフェス」というフェスをやっているんですが、出演者にとってすごくいいフェスなんですよ。まず出演者に食券と一枚のマップが渡されるんです。そのマップには二十店舗ぐらい、もらった食券で食べられる店が書かれている。そして、出演者は思い思いに行きたい店に行って、渋谷のご飯を食べる。つまり、ご飯屋さんが渋谷の街を盛り上げるために「やついフェス」と提携しているんですよ。それって、すごい素敵なことじゃないですか。だから早稲田祭もあれだけ関わっている人も多いわけですから、そういうことをやってみたら面白いと思います。そしたら出演者も喜ぶしお店も喜びますよね。そうやって早稲田祭によって、早稲田の街全体がもっと活性化していったらいいなと思います。というわけで、今年の学祭当日は僕に、近辺で食べれる食券を5枚用意しといてください。くれぐれもお願いしますよ。

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