マツリバナシ。

早稲田祭をもっと楽しくするウェブコラム

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マツリ×アイデア

アイデアは会議室から生まれない

Walkin’
企画集団便利舎
早稲田大学広告研究会
早稲田リンクス

マツリはそこに存在するだけではマツリにはならない。マツリという場で、お店を出し、なにかしらの催し物を開くことによって祝祭空間として成立するのである。今回はマツリという空間を彩るイベントを開催する四団体にお話を伺った。広告研究会(以下広研)から新保さんと山中さん、便利舎からは石川さんと古澤さん、Walkin’からは大野さん、早稲田リンクスからは奥泉。各団体の企画の、面白いアイデアはどこから生まれるのだろうか。

※広研は企画団体ではございません。

 


 

——まずは各団体の紹介をお願いします

 

新保「広研の新保です」

山中「同じく広研の山中です。今年で創設105年、早稲田の3大サークルと呼ばれているサークルです。〈広告で社会に驚きを〉というコンセプトで活動をしています。普段は、1・2年生と3年生で分かれています。1・2年生は『映像』・『グラフィック広告』・『戦略』の3つのチームに分かれて活動していて、3年生になると『実践チーム』という様々な媒体を扱うチームになります。
 ですが、早稲田祭だけは全部のチームが一つになって力を合わせてやっているので、普段の活動とは別の面白さがありますね。早稲田祭では去年から始まった『wasFES』という芸能人をお呼びするトークショー型のイベントを運営しています。今年は道重さゆみさん、今井華さん、近藤千尋さん、ぺえさんをお呼びして四つのテーマでイベントを開催させていただきます。」

大野「Walkin’は今年で10年を迎えて〈明日自慢できるバカをしよう〉とコンセプトで活動しています。大学生活ってバカなことができる最後のチャンスじゃないですか。普段の活動は、毎月みんなでミーティングをしながら、月2回バカみたいな企画を立てて活動しています。今はサークル内向けに企画しているのですが、これからはどんどん外に出ていって、社会を笑わせたいなと思っています。
今年の早稲田祭では『金魚救い』という企画を行います。今回は風刺みたいなことをしたくて、『すくい』と『救い』をかけました。すくった金魚を悪い人間が取っていって、その悪い人間の手を射的で撃って金魚を落とすと、金魚がもらえるという縁日になっています。誰がこの面白さをわかってくれるのか!というぐらいの、ニッチなところ狙っていこうかなって思っています(笑)」

石川「今年で37年目を迎えます便利舎の、石川と古澤です。サークルの特徴は、少ない人数ながらブッキングから制作物まで自分たちでやるというところですかね。
 放研、広研さんには確かに劣るかもしれませんが、その分一人ひとりの経験値は大きくて、自分たちのやりたいことができるということが強みです。今回の早稲田祭企画『テレビっ子』はテレビプロデューサーの佐久間さんと中嶋さんをお呼びして、『今のテレビやばいんじゃないの?』みたいな話をしていただきます。あと、今年で17回目を迎える『早稲田王』もあります。去年はエンディングフェスティバルを除いて一番大隈講堂前で人が来たんです」

奥泉「早稲田リンクスの奥泉と申します。僕たちは『人と情報の交差点』というのをモットーにしてウェブ、フリーペーパー、イベントの3媒体を用いて情報を発信しています。僕たちも少数精鋭で、一人ひとりの意見が平等に扱わるのが特徴です。今年僕は2年生なのですが、イベントの統括やらせてもらえたり、1年生がイベントの副統括やっていたりと、全員がちゃんと活躍できるし何でもできるサークルです」

 

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——皆さんは早稲田祭以外でも企画を打っていると思いますが、イベントはどのように運営しているのでしょうか。

 

新保「広告研究会は最近ですと『1/13プロジェクト』というLGBTについて考える企画をやりました。この企画は3年生だけの『実践チーム』が作りました。広研の1、2年生は媒体別に自分たちで広告を作るだけなんですけど、3年生になったら今度は自分たちが培った能力を使ってメッセージを発信することができるようになります。だから、普段の活動は企業の人に協力してもらって広告を作るトレーニングをしていて、企画を出すことを活動のメインにしているわけではありません。
 早稲田祭のようなイベントの場合は、イベント全体の担当者がいて、その下に4つの企画それぞれのトップに立候補してくれた人たちがいて、トップダウン方式で企画を作っています。」

 

——各企画のトップに立候補した人が企画をするということですね。

 

新保「そうですね」

山中「広研では、企画の構成員の80パーセント以上の合意が得られないとその企画案は通らないようになっています。芸能人の方を呼んで企画をすることを当たり前にしたくないという思いもありますが、あくまでも『一つのテーマを広告する』ということを考えたときに、著名な方に来ていただいた方が目標が達成しやすいんですよね」

 

——Walkin’さんは普段はどんな活動をしているんですか。

 

大野「普段は1月かけて企画を考えています。まず5班に分かれて3週間企画会議をして、最後4週目にコンペをしてそのうち2つの企画を採用して翌月に実際にその企画を行います。だから本当に面白い企画じゃないと通らないんです。
 『明日自慢できるバカ』って結局一番新しいことをやろう、ということなんです。だから、新しいことをやろうということはいつも考えています。大隈講堂で昼寝をする企画も、『大隈講堂が使われてきたなかで誰もやったことのないことをしよう』と言ってやり始めたんです。結局学校から怒られてしまったのですが(笑)。普段の企画は一部の人が知ってるだけでそんなに知られてないと思うので、もっと知って欲しいですね。」

石川「便利舎は7月の前半に学内イベントを2つ、早稲田祭で『早稲田王』ともう一つ別の企画を1つやっています。僕たちはイベントの6ヶ月前にはアポイントメントを先に取りはじめます。それで、イベントの4ヶ月前にアポの進捗や企画内容などを考慮してみんなで実際に運営する企画を選びます。」

古澤「今年の早稲田祭で行うイベントは副幹事長が一年生の時から企画してたもので、ようやく実現したんです。佐久間さんのアポは取れていたのにプレゼン通らなかったのが今回の『テレビっ子』というイベントなんです」

石川「企画は1班20人くらいで運営するので、本当に少数精鋭なんですよね。人数が多い『早稲田王』でさえも50人くらいでやっています。約7000人来るイベントをこれだけ少ない人数でやるのか!と思うと自分たちのことながらすごいと思います。普段は微塵もすごいとは思わないんですけど(笑)」 

 

——『早稲田王』というブランドがありながら他の企画も運営しているのですね。

 

石川「むしろ『早稲田王』のせいで、僕らの民度は低いと思われてしまっています。『早稲田王やっているサークル』って言うと引かれてしまうので」

奥泉「人に虫を食わせるっていう(笑)」

 

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——『早稲田王』という企画はいつから行われているのですか。

 

石川「21世紀あたまからですね。最初はクイズ大会だったですが、どんどんヤバい方向に進化していったらしいです(笑)。昔は水で泳ぐアジを捕まえて食べたりしてたらしいですね。食中毒対策で焼かないといけないからといって、焼き石で焼いて食べるという企画だったみたいです。最初期の早稲田王はもっと大変なことをしていたと思うので、最近はまだ落ち着いた方ですね。
 周りからはゲテモノ企画として見られてしまっていますが、作る側としては『早稲田王』にもちゃんとメッセージを込めているんです。年に1回の一大イベントなので、メッセージはとても大切にしています。対決に勝った人が最後に演説するのですが、それがアツく、泣けるものが多いですね。早稲田祭に来てない人に向けてとか、こんな俺でも早稲田でやっていけるんだという話とか。それが結構みんな好きで、早稲田王やりたくて早稲田入った人とかもいるんですよね」

奥泉「リンクスは企画においてはターゲット、メッセージ、ゴールをどうするかということを大切にしています。広研さんと一緒なんですけど、企画を打つときにはメッセージを先に決めています。それで、最終的にフリーペーパーを読んだ方やイベントに来てくださった方がどう感じて、どう動いてくれるのかがゴールです。そこに合わせて企画を考えるので芸能人を呼ばないといけないということはないんです。Walkin’さんの金魚の企画も、コンセプトがしっかり作られてさえいれば、リンクスでも行なえます。
 あと、企画書も学年関係なく出せるんです。学年などに関係なく対等に企画書が扱われるのがリンクスのいいところだと思っています。僕は去年あんまり早稲田祭に関わってなかったんですけど、一年後には統括として企画を立てている、といったことがあるんです」

 

——何かを作るとき、アイデアって簡単には思いつかないものですよね。みなさんは普段どのようにして企画のアイデアを出しているのでしょうか。

 

新保「大人数で考えてみんなでチェックをしながら、質を上げていく感じです。一人が頑張るというよりも、いろんな人が手伝って作り上げます。大人数で会議が進まないときは、少人数にしてアイデアを出しています。
 僕らが目指してるのが、お客さんの満足度が90パーセントを超えて、なおかつ学生で80パーセント埋めるということなんです。だから、ニッチなところに行きづらい部分はあります」

大野「僕たちは、まだ10年目なんでとがってられますね。安定はしたくないし、どんどん変えていきたいです。アイデアの出し方は『日常にバカを入れていく』というコンセプトだから、日常が既に会議になっています。例えば、『ニトリ人間コンテスト』っていう企画があるんですけど、ニトリにいって家具を買って、説明書なしで組み立てて、キャスター着けて公園で爆走するっていう」

一同「(爆笑)」

大野「たまたま鳥人間コンテストを観て、ニトリに行ったときに、普段から企画について考えているからこそ、『この家具をどうにかして面白くしたい』と思って、企画案をつくっています。いつも企画について考えていると、いいものが出てくるということはありますね」

石川「でも確かに雑談からいい案が生まれることは多いですね。会議もグループワークが多いですし、少人数で叩き合って作っています。ですが、雑談からなにかが生まれるということはかなりあります。みんなちょっと斜に構えているので、王道にはあんまりいきません。だから、ニッチな出版社の方や作家さんに出演をお願いすることが多いです」

奥泉「リンクスの企画案は個人で作って出しています。ですからアイデアこそ個人によって違うんですけど、僕たちも雑談から企画を作ることが多いかもしれませんね。案が浮かばないときはグループワークやブレインストーミングをしたりします。ですが、基本的には個人個人がやりたいことをやっています。企画の立ち上げは個人で作ることが多いので、内容が尖っているんですよ。それをある程度まるく、かつオシャレに(笑)していきます」

 

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——他校の学祭は全体の運営委員会が企画を作っているのに対して、企画を団体ごとに作っているという学園祭は本当に早稲田祭しかありません。ここには早稲田特有のサークル文化があると思うのですが、企画をやっていてよかったと思うことはありますか。

 

奥泉「お客様の笑顔を見ることができたときですかね(笑)」

石川「ヤフコメで『サラリーマンの対談で金とるんじゃねえ』と書かれたことがあって、逆にうれしかったです。 社会に認められたって(笑)」

古澤「叩かれてむしろ承認欲求が満たされましたもん」

 

——Walkin’さんは外から叩かれることが多いんじゃないですか。

 

大野「そうですね。めちゃめちゃ叩かれます。でも俺らがやってることはバカだから、叩かれるのも怒られるのも逆にありがたいなと思います。そもそもコンセプトが『明日自慢できるバカをしよう』だから、こうやって話していてみんなが笑ってくれることが幸せです。それっぽいこと言ってますが(笑)」

山中「広研の場合はそれぞれやっていてよかったなって思う点が違うんですよ。人数が多い分、役割が細分化されているからなのですが。僕は去年イベントのMCやって、人前で喋れるようになったという自分の成長がうれしかったです」

新保「僕は去年の石原良純さんをお呼びしたイベントに関わっていて、そのイベントでお客さんが笑ってくれたことがうれしかったですね」

山中「まだイベント前で、自分にとって一番楽しいと思う瞬間をまだ味わっていないので、これから楽しみにしています。3月からしっかり準備してきたので。」

 

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——「早稲田祭といえばパフォーマンスサークル」というイメージがどこかあるかと思います。そのなかで企画サークルはあまりメインのサークルではないイメージがあるように思います。

 

奥泉「そうですね。企画団体が打つイベントが、早稲田祭のメインイベントになれるようにしたいと僕たちも思います。それこそ便利舎さんの『早稲田王』とか広研さんの『wasFES』は大きいステージところでやっているじゃないですか。リンクスがイベントを行なう10号館も大きいのですが、金銭面の問題や、スケジュールの問題で大隈講堂前ステージのような華やかな場所ではイベントを打てないんですよ。ですが、自分たちがやるイベントがパフォサーのステージと同等ぐらいの知名度があるぐらいにしたいです」

石川「みんなで集まって企画とか打ちたいなあと思います。」

古澤「やりましょうよ。」

 

——ここにいる団体で大隈講堂前のコラボレーション企画、見てみたいです。

 

大野「いつくらいになるんだろうね。」

奥泉「やっぱり中夜祭が現実的ですよね。」

石川「2年後か……。だいぶ先だな(笑)」

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