
マツリで響く小さな恋の歌
数多の学生が、自らの持つ情熱をぶつける早稲田祭。しかしその中で盛り上がる情熱は他にも存在する。
その情熱の名は「恋」だ。誰かと共に何かを作り上げる過程で湧き上がるものもあれば、普段と違う真剣な眼差しによって訪れるものもある。
今回は、早稲田祭でそのような情熱に侵された方にインタビューをすることに成功した。普段別々の団体で活動している彼との忘れられない思い出を語っていただいたのは、文化構想学部3年のA.N.さん。
恋をしたい人、何か刺激を求める人は必見だ。
——まずはあなたの簡単なプロフィールを教えてください。
私は現在三年生で、昨年、何人かの仲間と一緒に『泥臭く、早稲田から吠えろ』をコンセプトにしたパフォーマンスサークルを立ち上げに携わりました。今もそのサークルに所属しています。
——お相手の方とはいつからおつきあいされていたのですか。
大学2年の夏からです。大学1年の夏に交際を始めて一度別れたのですが、その間ずっと好きでいてくれた彼の熱い想いで、もう一度関係を結びました。それから現在もつきあっています。
——お二人の関係は良好であったのでしょうか。
それがそうでもなかったんです。
特に団体を立ち上げてから早稲田祭までの期間は、たった4ヶ月で早稲田祭のステージに立とうという無謀な挑戦に立ち向かっていました。組織運営からパフォーマンス制作まで、何もないところから作り上げるという作業は、想像以上に不安や困難の連続でした。
練習を引っ張って行く立場だった私は精神的に苦しい時期でもあって、彼には甘えて泣いて電話してしまったり、弱音ばかり吐いたりしていました。「そんなつらいならやめれば?」「お前もっとできると思ってたのに、弱音ばっかりじゃん。本当に弱いな」「そんなんだと一緒にいてイライラする」などと厳しい言葉をかけられたこともありました。
今となっては私を信じてあえて厳しくしていたのだと思いますが、当時は辛かったですね。
——では、早稲田祭を通してあまり良いとは言えなかったお二人の関係に何が起きたのでしょうか。
先ほども言ったように私は早稲田祭で良いパフォーマンスをするために、毎日一生懸命練習していました。演出制作や練習などで手いっぱいでほとんど相手と会うことはできてなかったですし、もしかしたらこのまま離れてしまうかもしれない、とも考えていました。
早稲田祭前日には喧嘩までして、本番前にはLINEも返ってきませんでした。おそらくステージを見にきてくれることはないだろうな、と思いながら舞台裏に着きました。
でも、そんな不安は一瞬で消えました。メンバーが、「1番前で見てるよ!」と教えてくれて、客席を覗くと最前列で待ってくれているのが見えました。
私は体が奮い立って、ここで初めて見てもらってすべて伝えるしかない! と思って踊りました。
パフォーマンスが始まると、彼はずっと微笑んで見ていました。私がいつも練習していた振りは、いつのまにか覚えていて一緒に踊ってくれて、ステージ上から何度も目があって頷いてくれて。
終わった後は走って駆け寄ってきて、「かっこよかったよ」「頑張ったね、報われてよかったね」と初めて褒めてくれました。そして泣きながら私のことを抱きしめてくれました。
ずっと聞きたかった、初めて褒めてくれたその言葉が嬉しくて、私も泣いてしまいました。
早稲田祭があったことによって私たち二人は以前よりももっと距離が縮まったのではないか、と思います。